2004年11月28日

『ニュースの天才』

今日3本目の映画レビューは『ニュースの天才』。アメリカの有名誌「THE NEW REPUBLIC」で、当時名物記者だったスティーブン・グラスが行った記事捏造がテーマという、実際にあった話の映画化です。

いろいろ考えることの出来るテーマだと思います。影響力のある情報源からデマが流されるというのは非常に恐ろしいことなので。この映画で舞台になるのは、格式の高い(=「信用できる」と考えがち)とされるメディアで、ライターがネタを掴んでから記事になるまで、しっかりとしたチェックが入るのにも関わらず、数々の捏造記事が世に流れてしまったという「事実」が描かれてます。パンフレットを買って読んでみたら、過去にも数々の捏造記事が世間をにぎわせたことがあるようで、今日昨日に始まったことではないのでしょうけど、こうやって正面きって映画として観てみると、改めてメディアというものの脆さを考えたのでした。

おっと、話がそれた。
映画としての出来も、個人的には十分満足でしたよ。劇中、ヘイデン・クリステンセン演じる主人公が、「なぜ記事の捏造をしたのか」という動機部分にまったく触れられていなかったのがやや不満だったのですが、パンフレットによると監督が「本人が動機については真相がわかっていない」と述べていて、そこは観客の捕らえ方に任せる、とそういうスタンスではじめから臨んでいたようです。作り手によっては、それなりの結論を用意して、そこに収束されるようなドラマを描くという方法もとりそうですが、今回映画を撮ったビリー・レイという監督の主眼はそこになかったようで。なるほど。

作品のインパクトはそれほど大きくないし、人によっては中途半端な映画だと捉えるかもしれませんが、私は結構好きです、この作品。

作品評価:★4 ※採点基準はこちら

『用心棒』

黒澤明監督の代表作のひとつ、『用心棒』を鑑賞。いやー、さすが黒澤監督。これだけ面白い時代活劇映画、そうそうないんじゃないスか?わかりやすい登場人物達、シンプルな設定にストーリーと、映画の面白さをとことん濃縮した感じですか。娯楽としての面白さだけで評価するなら『七人の侍』よりも上ではないでしょーかね。

作品評価:★5 ※採点基準はこちら

三船敏郎の主人公っぷりは言うに及ばず、敵対する悪役達に端役達も、それぞれ見事なまでに個性的で、誰も彼もが見事の一言です。アクションシーンのキレの凄さといい、全編見せ場たっぷりであっという間の110分ってやつです。そして「あばよっ」の終わり方。もう非のつけどころが無い、という作品ですね。

えーと、ここまでエントリーを書きながら、どうやってこの映画の面白さを文章にしたらいいのかわからずに困ってますw
とりあえず、まだ未見の人は絶対に観とけー、としか言いようがないですね。必見!

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5 凄い時代劇です
5 理屈抜きで楽しもう!
投稿者 shaw : 22:59 | トラックバック

『レディ・イヴ』

先日レンタルしてきた『レディ・イヴ』という映画を鑑賞しました。これがとても面白い!

作品評価:★5 ※採点基準はこちら

なんといっても、バーバラ・スタンウィックの自由奔放な演技が素敵すぎます。楽しそうに演じている(というよりも、自然体のようにも見えるけど)のが伝わってきて、こちらまで楽しくなってくるというのは凄いことだと思いますねー。この女優さん、フランク・キャプラ、ハワード・ホークス、そしてビリー・ワイルダーと当時を代表する映画監督の元で、それぞれ違った魅力(方向性は似ているかな)を出していて、個人的にかなり強烈な印象のある人だったんですが、これほど笑顔が魅力的な人だとは知りませんでした。改めてファンになっちゃいました~♪

ストーリーも演出も素晴らしい出来だと思います。もっとはじけたスクリューボールコメディだと思っていたら、意外とまっとうな(?)ストーリーでしたが、(ラブ)コメディとしての完成度の高さは保障しますよ!やはり、この時代(30~40年代)の作品で、名作として名を残している作品にはハズレはすくないです。

あぁ、もっとこの監督の映画を観てみたいなぁ・・・。

投稿者 shaw : 09:24 | トラックバック

2004年11月01日

『コラテラル』

マイケル・マン監督の新作、『コラテラル』を鑑賞してきました。
観に行く前に私の耳に入ってきた評判、シナリオに関してはかなり厳し目だったのであらかじめその辺を割り引いての鑑賞だったのですが、それが良かったのか個人的にはかなり楽しめました。

作品評価:★4 ※採点基準はこちら

やはりシナリオに関しては穴が多い、というか突っ込む気になればキリがない展開だった気もするのですが、この映画の最大のポイントはもちろんそんなところではなくて、夜のロサンゼルス(でしたよね?)のデジタル映像の美しさと、それが醸し出すちょいとダーティーな雰囲気の中でのタクシー運転手(ジェイミー・フォックス)と殺し屋(トム・クルーズ)の掛け合いにあるわけです。妙に説教くさい殺し屋の描き方(撮り方)なんて、完全にマイケル・マン節全開な感じですよね。この監督は『インサイダー』といい『ヒート(未見だけど・・・)』といい、硬派な映画(映像)を撮らせたらハリウッドでもぴか一な存在だと思われ。

逆に、その雰囲気を堪能できないかぎり、この映画を観てもそれほど面白く感じないのではないでしょーかね。個人的には、映画はシナリオが面白くて初めて成り立つ、という気持ちがもっとも強いのですが、たまにはこういう雰囲気で面白さを堪能できる映画もいいですよね。

投稿者 shaw : 00:33 | トラックバック

2004年10月31日

『世界でいちばん不運で幸せな私』

世界でいちばん不運で幸せな私』を劇場鑑賞してきました。久々にシネスイッチ銀座に行ってきました。個人的にここは、恵比寿ガーデンシネマ、シネマライズ(は滅多に行かないけど)、シャンテシネに並んで、単館系でははずれ映画の少ない映画館の一つだと思っています。

さて、私は、「ヨーロッパで大ヒット」という触れ込みと、公式サイトの雰囲気のよさ(とトレーラーの出来のよさ)に惹かれてこの映画を観にいったわけですが、映画の出来に関しては私の期待を超える作品ではなかった、というのが正直な感想ですねー。

いや、面白くなかったとは思わないんですよ。むしろ、ラブコメディとしてはなかなか良く出来ていると思います。ストーリーは、たわいのないところから始まった二人だけのゲームのやりとりは楽しかったですし、ところどころホロリとしたり、それはやり過ぎだろとちょっといらいらしたりで、感情移入も十分できましたしね。演出も、あらは目立ちましたが、全体的には御伽噺的な雰囲気を上手くかもし出してたように思いました。それに、全体的にテンポも悪くない。個人的に、コメディ系映画に必要だと思っている面白さの要素はそれなりに満たしてました。

では、何が不満だったんでしょうかね。それが自分でもいまいちよくわからないのです。中途半端(に私は感じた)ラストのせいですかね。ところどころにみられた、ちょいと下品なやりとりでしょうか。ひょっとすると、期待感がちょっと大きすぎたのかもしれないですねぇ。私の中では『アメリ』と『ぼくセザール 10歳半 1m39cm』のおいしいどこ獲りというイメージが先行してたかもな、と劇場を後にしながらちょいと反省。。

家に帰ってから、Yahoo!Movieのユーザー批評を確認してみたら、案の定作品の評価が真っ二つに割れてました。まぁ、そういう映画、ということです。人によっては結構がっくりくるみたいですねー。個人的には消化不良というか、もう少し面白くできそうなお話だなぁ、と思いつつ、無難な★3つ評価ということで。

作品評価:★3 ※採点基準はこちら

投稿者 shaw : 23:53 | トラックバック

2004年09月20日

『スウィング・ガールズ』

先ほどレビューを書いた『インファナル・アフェア 無間序曲』を観る前に、実は『スウィング・ガールズ』も鑑賞していたのでした。なんだか、180度雰囲気の違う映画ですね。この組み合わせはどうなんでしょう?どうでもいいけど。

で、『スウィング・ガールズ』なのですが、これもなかなか面白かったです。軽いノリで明るくなれる(元気になれる)映画を観たい方には是非ともお薦めします。なんというか、出演している若い娘たちがとてもまぶしい映画です(←親父くさい表現だ・・・)。映画のラストを飾る、演奏会のシーンは、上手いのか下手なのかいまいちわからない演奏でしたが、熱意がジンジンと伝わってきて、私も熱くなってしまいました。こういう展開、お決まりとはいえ弱いんだよなぁ、俺。

作品評価:★4 ※採点基準はこちら

私なんかは、こういう映画の影響を受けやすいところがあって、映画を観終わった後はジャズもいいなぁーなんて思ったクチなんですが、今回はちょいと金欠気味なので、サントラは買いませんでした。楽器を弾くほうにはあまり興味はわかないけど、聴くほうはキライじゃないし、こういうのをきっかけに未開のジャンルを聞き始めるのは良いことだとは思うんですけどね。

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『インファナル・アフェア 無間序曲』

久々に映画を劇場鑑賞してきました。そういえば、このBLOGでの映画レビューも随分間が空いちゃいましたねー。
で、観てきたのは『インファナル・アフェア 無間序曲』。個人的に、この秋期待の1本です。ちょうど1年前に公開された『インファナル・アフェア』の続編になるのですが、話の内容は前作からさかのぼること10年前、ラウとヤン、そしてウォン警部とサムの因縁が、どのように絡みつくのかをじっくりと見せるドラマになっています。

観た感想をまとめるとですね、先週金曜日のニッカンスポーツ紙の「週末シネマ」(今週はインファナル・アフェアが取り上げられていた)とほとんど同じになってしまうんですが、とりあえず私なりに。
・名作の続編なのに、かなり面白い。
・前作とのつながりがいたるところにあって、そこに矛盾点がない(少なくとも、私には矛盾点がみつからなかった)。
・当然、前作でいまいち意味のわからなかった伏線の一部が明らかになってます。
・若い主演の二人、どうみてもその後のトニー・レオン、アンディ・ラウには見えない(笑)のに、映画を観ているうちになんとなく似ているような錯覚にとらわれる(のは私だけか?)。ヤンの麻薬を吸ってブツの確認をしているシーンとか。
・ディテールでにやりとさせられる(オープニングで、エディソン・チャンが書類袋をパタパタ足に叩き付けているシーンで、いきなりにやりとしたのは私だけじゃないだろう)。
・前作のような、いつ正体がばれてしまうか、という緊張感はないけど、渦巻く陰謀とか各キャラクターが抱える葛藤等、人間ドラマの描写でしっかりと魅せるつくりに。
・前作に引き続き、アンソニー・ウォンとエリック・ツァンの演技が素晴らしいのは言うに及ばず、若き暗黒街のボス役のフランシス・ンという人がまた上手いんだ、これが。
・前作は、映像がシャープすぎるというか、良い意味で今風の映像が多く、正直少々マフィア映画という雰囲気に欠ける気がしていたのですが、今作はいかにも香港のマフィア映画という雰囲気をぷんぷんと醸し出していて、作品とみごとにマッチしてます。

個人的には、前作の出来が素晴らしすぎる(最後まで維持される緊張感がたまらんです)こともあって、さすがにそれを超える作品ではないと思いましたが、その前作をより面白くする映画として、とても完成度が高いと思います。とりあえず、前作を観た人は絶対観とけ~。逆に、『インファナル・アフェア』という映画を知らない人にはちょっと敷居が高いかもしれないけど、そういう人も、どうせなら前作とセットで鑑賞することを強く薦めます。

作品評価:★4 ※採点基準はこちら

投稿者 shaw : 18:19 | トラックバック

2004年08月23日

『シービスケット』をDVDで鑑賞する

今年年明け早々に日本公開された『シービスケット』がやっとDVD化されたので、早速購入して鑑賞しました。やっぱりいいです、名作です。私は大好きな映画です。

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5 感謝で胸がいっぱいになる作品です
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さて、私は比較的DVDをぽんぽん購入してしまうタチなのですが、購入をきめる際はあまりDVD特典というのは気にしない、というか購入しても特典はほとんど観ないので、個人的には特典を豪華にするよりは単価を安くして欲しいなぁなんて思うこともしばしばだったりします。で、今回の『シービスケット』ですが、この特典映像には珍しく興奮しました。

あれですよ、劇中の最大の盛り上がりを見せる、ウォーアドミラルとのマッチレースがあるじゃないですか。あのレースの本物の映像が拝めるんですよ。てっきりそんな映像は残っていない(ラジオ実況しか残っていないのかと・・・)と思っていたので、その完全オリジナル映像を見て改めて鳥肌がたってしまったのでした。そして、映画での再現があまりにも見事なことに、こちらも驚きました。ゲイリー・ロスはいい仕事をしましたね!

投稿者 shaw : 01:06 | トラックバック

2004年07月26日

『スチームボーイ』

先ほど「ユナイテッドシネマ としまえん」に行ってきたエントリーをしたわけですが、今日そこで観てきたのが『スチームボーイ』です。『AKIRA』で有名な大友克洋が長い時間と費用をかけて作った大作アドベンチャーアニメ(というジャンルでいいのかな?)です。

予告を見たかぎりでは、作品の出来に関する期待は半信半疑といったところだったのですが、実際に鑑賞してみたところではちょっと「疑」の方が強く出てたかなぁ・・・というところですか。

どうしても『AKIRA』との比較になってしまうと思うんですよね。作風は全然違うのですが。で、比べてしまうと、大友克洋ってこういう冒険アクションはあわないのかなぁ、と考えてしまうわけです。これは、『AKIRA』をはじめて読んだ時の、あのSF世界観に驚き戸惑った印象を今でも引きずっているからなのかもしれないですが。

多くの人が感じたんじゃないかな?と思うのは、登場キャラに感情移入が全然できない、という点じゃないですかね、やっぱり。主人公の少年もそうなんですが、あのお姫様が全然わからないです、正直言って。声優もいまいちしっくりこなかったなぁ、個人的には。

冒険活劇って、観ていてワクワクできるかどうか、が重要だと思うのですが、今回はそのワクワク感が全然なかったので、ちょっと評価も辛めです・・・。

作品評価:★2 ※採点基準はこちら

投稿者 shaw : 00:30 | トラックバック

2004年07月13日

『ワイルド・レンジ 最後の銃撃』

日曜日に、『ワイルド・レンジ 最後の銃撃』を観てきました。

かなり私のツボを抑えた良作でした。イーストウッドの『許されざる者』を最後に、ウエスタン映画は完全に廃れたように言われますが、この作品は古き良き西部劇のスタイルをしっかり踏襲していて(悪く言うと、どこかで観たことあるようなシーンの寄せ集めと言えなくもないけど)、まだまだこういう映画も撮ることができるんだなぁとうれしくなりました。

全体を振り返ってみると、終盤のシナリオがちょっと弱いかなぁ、という気もしますが、画がとてもきれいで、美しい西部という雰囲気を見事に表現してて、シナリオの良し悪しなんか気にならなくなります、多分。最近目立った活躍のなかったケヴィン・コスナーですが、久々に良い仕事をしたんじゃないですかね。『ダンス・ウィズ・ウルブズ』でも思いましたが、この人は本当にウエスタン映画というものに敬意を払っているんだなぁと思わせる、丁寧な作風はとても好感度が高いです。あまり注目浴びていない作品ですが(ファーストランがシネパトスだもんなぁ・・・)、それがちょっともったいないなぁと思うのでした。

作品評価:★4 ※採点基準はこちら