2003年09月22日

『ロジャー&ミー』

cover長いこと気になっていた、マイケル・ムーアの初監督映画『ロジャー&ミー』、最近DVD化されたのをきっかけに鑑賞してみました。

作品のことを知らない方のために、まずは簡単なあらすじを。
マイケル・ムーアの生まれ故郷、ミシガン州フリント。ここは世界的自動車メーカー、GMの発祥の地で、工場も数多くあり、地元の人間の多くはその工場の従業員。ところがある日、GMの会長ロジャー・スミスが「3万人の従業員を解雇する」と発表、実行に移した事で、フリントは失業者にあふれ、悲惨な状況になる。これに憤ったマイケル・ムーアは、会長にフリントの惨状を実際に見てもらおうと、大企業GMに単身乗り込むのだった。

以下、簡単な感想。
・十数年前の作品だけあって、マイケル・ムーアがかなりスマートでした。太ってなかったんですねー。どうでもいいけど。

・目的のためには、即座に実行。つまり、近作『ボウリング・フォー・コロンバイン』でもみせた突撃インタビューのことなんですが、あのスタイルはデビュー作から変わらずでした。ロジャー・スミス会長に直接会うために、会長の現れそうなところに執拗にアタックする。で、当然なかなか会長を捕まえることはできないのですが、その都度出会ういろんな人にそのものずばりなインタビューを実行。この鋭い切り口が作品の基調になってます。

・『ボウリング~』のカナダでのインタビューのような、笑える場面は全然ありません。全編を通して、かなりシリアスな雰囲気を維持してます。当作品のほうが、まっとうなドキュメンタリー映画といえるかもしれないですね。

・一度鑑賞後、監督の解説付きで最初の10分ほど観直してみたのですが、今年の5月収録と結構最近のマイケル・ムーアの声が収録されていて、かなり面白そうでした。今日は時間がなくてまだ続きを観ていないですが、近いうちに再度鑑賞してみます。

作品評価:★3 ※採点基準はこちら

-- 追記 --

おそらくこの作品の時代背景って、日本の自動車会社が急成長して、アメリカでの市場を拡大させていたころですよね。

作品の中では、GMは3万人もの失業者を一気に作り出すほど切羽詰った状況ではなさそうでしたけど、実はもう日本企業に太刀打ちするために布石を打っておく(つまり経営の合理化ですね)必要があった時期ではなかったのかな、と思いました。ま、この辺の時代背景をしっかり確認したわけではないので、認識に過ちがあるかもしれませんが。
もしそうだとすると、経営側の判断としては、資本主義の中では間違ったものではなかったわけで、しかし労働者の立場からみると理不尽なことには変わりはなく。

実際にこの大量レイオフの遠因が日本企業になるのかな、と思いながらこの作品を観ていると、さすがに面白いドキュメンタリー映画として観ることはできませんでした。

ただ、今の日本が世界に太刀打ちできるのが自動車産業とTVゲーム産業だけ、とか考えたら、なりふりかまっていられないという現状もあるだろうし、それで日本が競争で優位に立つと、競争相手の国ではかならずこのようなことが起こって当然でしょうし。
もしかしたら日本がこのような立場になっていたかもしれないですしね(最近の日産の建て直しだって、工場にしてみるとかなり厳しいものだったはずだ)。

そう考えると、国を超えた資本主義に基づいた競争、国を豊かにしているんだか、貧しくしているんだか、わからなくなります。競争によって、技術が日進月歩で進化しているのは事実ですが、それが人々の生活のシアワセに結びついているのか、と。私が改めていう問題でもないですが。

というわけで、本編から離れて、いろいろ考えさせられる作品でした。
『ボウリング~』を観たときも凄い衝撃を受けましたが、銃問題を日頃身近に感じない分「対岸の火事」的な部分があったのですが、こっちは「自動車産業」、「資本主義と競争原理」という、日本にも深い関係のある問題ですからねー。。

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投稿者 shaw : 2003年09月22日 00:41

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