2004年12月13日

『赤ひげ』

先週に引き続き、黒澤明監督作品を鑑賞。今日は『赤ひげ』です。
暴れん坊将軍なんかでもおなじみ(でしたよね?たしか)の「小石川養生所」に着任した主人公保本(加山雄三)が、通称赤ひげ(三船敏郎)先生と出会うことで、医者として、そして人間的に成長していくという話です。

作品紹介やレビューを読んである程度覚悟はしていたのですが、鑑賞中泣いちゃいました。いや、号泣といってもいいかも。小石川養生所は、お金のない庶民のための施設なわけです。で、患者はみな貧乏に苦しんだ人生を送ってきてて、中にはとんでもない過去を背負ってきた者もいる。この作品の前半は、その患者達の死の間際または死後に明らかにされる、重く、しかし純粋な生き様が描かれているのですが、ここですでに私の涙腺は緩みっぱなしです。

そして、なんといっても、赤ひげこと三船敏郎の存在感。悲しいエピソードの連続なのに、決してこの作品が暗くならず、常に前向きに思えるのは、赤ひげ先生の人情あふれる暖かさがあるが故でしょう。時には、町奉行を暗に脅迫したり、ならず者相手に手加減無しの大怪我を負わせたり。しかし、自分の患者や助手達にはひたすら暖かいまなざしを送り続ける。素晴らしいじゃないですか。

作品後半は、心に深い傷を負った少女と主人公の触れ合いによって、主人公の成長の描写に主眼が置かれます。少女の看病のあと、逆に倒れた主人公を看病する少女のシークエンス。その後の、やたらと大人びている「子鼠」と呼ばれる少年と、心の病から立ち直った少女とのやりとり。どれも秀逸なシーンだと思います。あくまで、悲しみの中に希望が失われないというスタンスが素晴らしいですよね。終わり方も隙がないし、とても良い作品にまた巡りあいました!

作品評価:★5 ※採点基準はこちら

赤ひげ
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5 保本登の成長物語
5 日本人の生き方を支える「倫理観」の原点がここに
5 山本周五郎の名作をみごとに表現
-- 追記 --

ちなみに、原作は山本周五郎。気になるので、今度こっちも読んでみたいと思います。

赤ひげ診療譚
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5 すばらしい人生論を、
5 青べか、季節のない街を土台に作り上げた名作です
5 心を打つ小説
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投稿者 shaw : 2004年12月13日 00:54

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