2005年03月06日

「用心棒日月抄」

ここのところ、読む本にあたりが多くてうれしいです。
先日エントリーした「花神」を読了した後、藤沢周平の「用心棒日月抄」というお話を読んでみたんですが、これがまた大変面白かったわけで。

時は江戸時代、あの赤穂浪士の吉良邸討ち入りの直前、江戸の町で用心棒稼業で生計を立てている浪人、青江又八郎が主人公で、数々のエピソードを経ていくうちに、浅野・吉良家の争いに少しずつ巻き込まれていき・・・、というあらすじです。

面白い時代小説って、まずは主人公とそれを取り巻く人物や背景に魅力がなければ成り立たないじゃないですか。当然、この小説の魅力も、登場人物たちの生き生きとした描写が前提にあるんですが、この作品の秀逸なところは、日本人なら誰でも知っている(というのは言いすぎとしても)赤穂浪士の討ち入り事件との絶妙なリンクにあると思うんですよね。決してストーリーのメインではなく、だけどいろいろなエピソードがこの「赤穂浪士」というキーワードでつながっていて、最後まで読み終わった後に、こういう見せ方もあるんだなぁと感心してしまいました。

主人公・青江又八郎自身も、お家の事情で脱藩、浪人している都合上、自分の国から派遣されてくる刺客との斬りあいもあるし、同じ浪人仲間との心休まるような交流もあるし、そして赤穂浪士たちとのニアミスもあってで、バリエーション豊かなエピソードを、わくわくしながら一気に読了してしまいました。いやぁ、満足です。しばらくの間、藤沢氏の小説でいい刺激を味わえそうです!

用心棒日月抄
用心棒日月抄
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藤沢 周平
新潮社 (1981/03)
売り上げランキング: 15,125
通常24時間以内に発送
おすすめ度の平均: 4.75
5 良質な時代エンターテイメント
4 血しぶき
5 味わい深く、かつエンターテイメント性も持ち合わせた小説です
投稿者 shaw : 23:01 | トラックバック

2005年02月28日

「花神」

先週いっぱい、「花神」という司馬遼太郎氏の小説をむさぼるように読んでました。これまで私が手に取ったことのなかった作品で、大村益次郎という明治維新の終わりのほう(第二次長州征伐~戊辰戦争)で活躍した人物のお話です。これがもう、面白いのなんのって。

私、大村益次郎という人のことはほとんど知らなくて、漫画「おーい、竜馬」でちょっとだけ登場する頭の大きな蘭学者(で、長州藩の軍師)という印象と、司馬先生の小説なんかで度々目にする「明治陸軍の創始者」というキーワードくらいでしか捉えたことのない方だったんですが、こうまで数奇な人生を歩んだ「偉人」だとは思いもしませんでした。

この話の一体どこにそこまで惹きつけられたのか、読み終わった後に振り返ってみると少し不思議だったりもします。
・あまり知らなかった人物に対する興味心。
・政治家・思想家ではなく、技術屋として偉業を達成した人物の、司馬先生の描き方が面白かった。
・江戸末期に来日した蘭医シーボルトの娘イネと大村益次郎の邂逅に惹かれた。
といった感じですかね。

長州藩という、明治維新を代表する藩で活躍した人物なのに、当時を代表する人物(坂本竜馬とか高杉晋作、薩摩藩の要人etc...)達との絡みがとても少ない、というのがとても新鮮でしたしね。

非常に読みやすいし、明治維新を普段とは違う側面から見ることができるお話だと思うので、この時代に興味がある方には強くお薦めします。

花神〈上〉
花神〈上〉
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司馬 遼太郎
新潮社 (1976/08)
売り上げランキング: 18,863
通常24時間以内に発送
おすすめ度の平均: 4.85
5 だまされたと思って…
4 もう一つの幕末
5 地味ながら…
投稿者 shaw : 00:45 | トラックバック

2005年01月25日

藤沢周平

の時代小説にはまりぎみの今日この頃です。

きっかけは、なんとなく職場の人と本の話になって、私が司馬遼太郎の大ファンだという流れから、時代小説の話に進展して、そこで藤沢周平の名前が出てきて、まだ全く読んだ事なかったのでせっかくだから本を貸してもらおう、とそんな感じです。

去年のうちに、「隠し剣」の2冊を早速読んでみて、これが大層面白いお話だったのでした(レビュー書く気だったのにいつのまにかタイミングを逃した・・・)。昨年末に映画化されたのもこの短編の中の一つですね。で、続けて貸してもらったのが「蝉しぐれ」。これも代表作の1冊らしいです。

こちらは今年に入ってから読み始めてみたのですが、代表作と言うだけあって非常に素晴らしい出来なのです。なんといいますかね、藤沢氏の話は日常風景の描き方が実にうまくて、全然作り話っぽくないのです。これまで私が愛読してきた時代小説って、「作り話」という前提のもと、面白い演出になっている話が多くて(歴史小説はまた別の話ね)、こういうしみじみとした日常の中に感動を生み出すタイプの小説はあまり読んだ事なかったので、大変新鮮なのです。

そして、すごく上手いなと思うのが、日常の「静」の描写の中に、剣術にまつわる「動」の描写の織り交ぜ方ですね。「隠し剣」シリーズはもとより、「蝉しぐれ」でも秘剣にまつわるエピソードが途中で出てきて、それが見事なスパイスになっています。ただでさえ、剣術による対決の描写が素晴らしい上に、ストーリーへの絡ませ方が見事なので、こちらは読みながら身震いするしかない、というものです。

ちょいとべた褒めしすぎな気もしますが、そのくらい私はかなり藤沢氏の時代小説が気に入ってます。全体的にあっさりした感じの中に、味わい深い演出の見せ方がとにかく素晴らしいのです!引き続き面白そうな本を読み漁るとするかな・・・。

投稿者 shaw : 00:33 | トラックバック

2004年09月20日

「沈まぬ太陽」

実は完読してから結構立つのですが、最近「沈まぬ太陽」(山崎豊子著)を読んでました。
きっかけはこのFLASHムービー。はじめてこのFLASHを見た時は、いろんな意味で衝撃を受けました。

このJAL123便の墜落事故が起こった時、すごく騒がれた記憶はうっすらと残っているのですが、当時私はまだ小学生の低学年だったようで、実はどういう事故だったのか全然知らなかったんですよね。で、上記FLASHで衝撃を受けた私は、早速ネットで事件について調べてみたのでした。上にリンクをはったWikipediaのサイトがとてもシンプルにまとまっていて、概要はすぐにわかったのですが、さらにWEBをさまよっていると、どうやら「沈まぬ太陽」がこの事故をモチーフにした小説だ、ということを知り、一気に購入したのでした。

沈まぬ太陽〈1〉アフリカ篇(上)
山崎 豊子
新潮社 (2001/11)
売り上げランキング: 6,795
通常24時間以内に発送します。
おすすめ度の平均: 4
4 かなり感激しました・・・
5 「沈まぬ社会」にしなくては
5 季節

200万部以上売れたベストセラーらしいので、私みたくこの本のことを知らない(さすがにタイトルは知ってたけど・・・)人の方が少ないのかもしれないですね。この話自体は、実在の人物への取材をもとに再構築された、あくまでもフィクションなのですが、全然そう思えない描写が節々にあって、いろいろなことに不信感を持つようになってしまうかも・・・。

投稿者 shaw : 14:01 | トラックバック

2004年07月10日

「ダ・ヴィンチ・コード」

cover今、巷で話題騒然(でもないのかな?)の「ダ・ヴィンチ・コード」を職場の編集長からお借りして、先日完読したのですが、ヒジョーに面白かったです。

一言で物語を説明するなら、「ダ・ヴィンチの名画には実は驚愕の秘密が隠されていた!」ということになりますかね。こんな説明じゃ、本の面白さを悪い方に誤解させてしまいそうですが、物語を読みすすめていくと本当に驚愕します、多分。
物語の冒頭でルーブル博物館の館長が何者かに殺害されるところからはじまり、その人物が残したダイニング・メッセージを追っていくとダ・ヴィンチや他の中世~近代に名を残した著名な天才たちの残した足跡には数々の秘密が隠されていて、それは世界的に有名な「ある秘密」に繋がっているわけです(この辺り、気になる人はぜひ読んでみて欲しいのですが)。

で、何がすごいかというと、巻頭で「この小説における芸術作品、建築物、文書、秘密儀式に関する記述は、全て事実に基づいている。」と述べられているように、本書の随所にちりばめられている薀蓄の一つ一つが、読んでいるこちらに飽きさせないところだと思うんですよね。私は全然キリスト教とか西洋芸術に対して教養はないですが、この本を読んで随分興味が湧いてきましたしね。

ルーブル美術館からはじまって、ダ・ヴィンチの絵の謎を追っていくうちにキリスト教の秘密にするどく切り込んでいく本作、私も読む前は「どうせ普段興味のない分野だしなぁ」という気持ちがあったのですが、そんなことは微塵も感じさせない面白さがあると思います。それはやっぱり肝心のストーリーがとても続きを気にさせる魅力を持っているからだと思うんですが、さらに西洋芸術やキリスト教に興味がある人にはもっと面白く感じるのではないでしょうか?

下巻あわせると結構な額になりますが、その価値はあると思いますよ。

投稿者 shaw : 23:53 | トラックバック

2004年06月26日

「亡国のイージス」

ちょっと機会があって、職場の方から「亡国のイージス」を借りたので読んでみたのですが・・・。これが面白いのなんのって。先日このBLOGでエントリーした「シービスケット」を読破したあとすぐに読み始め、通勤時間をフルに使ってやっと完読しました。かなりの充実感です。
一口で感想を言うなら、サスペンス・ドラマ・アクション全てが高いレベルでまとめられた傑作、といえるのではないでしょうか。

ちょっと最後のほうの艦内戦がくどかったかな、という気持ちもありますが、事件の全貌が見えてきたあたりからラストまでの緊張感にぞくぞくして、一気に(といっても2週間くらいかかってるけど)読みほしてしまいました。見所は沢山あると思いますが、私は上巻の後ろの方でホ・ヨンファの正体が明らかになるところで衝撃を受け、市ヶ谷での会議室での緊迫感のあるやりとりにしびれましたね。詳しく書いてしまうと、未読の方の楽しみを奪いかねないのでやめておきますが。

話の舞台のメインが護衛艦だったり、近代兵器の名前が次々と出てきたりで、ひょっとしたら無意識に敬遠してしまうジャンルかもしれませんが、読み始めると全然そんなこと気にならないと思いますよ。個人的に、かなりお奨めですね。

で、私の次なる標的は、話題作「ダ・ヴィンチ・コード」です。非常に評判がいいので、かなり楽しみにしてます!

投稿者 shaw : 14:02 | トラックバック

2004年06月12日

「シービスケット」を読破する

cover文庫本になるまで封印を予定していた、映画『シービスケット』の原作についつい手を伸ばしてしまいました。これが読み応え十分で大変満足だったのでした。

映画を観ただけじゃわからない、当時のアメリカ競馬事情が、それはもうきめ細やかな描写をされているので、競馬に多少なりとも知識のあるかたには特に楽しめると思います。例えば、映画の中ではレースごとの斤量の説明とかコースレコードについてなんて、全然ありませんでしたよね。そんなものを映画の中に盛り込んでしまうと、エンターテイメントとしての魅力が減ってしまうだろうし、敷居も高くなりそうなので、そういう部分をばっさり切ってしまったのは正解だと思うのですが、競馬を知っている人には、実際にはハンデの差がどのくらいあって、それを陣営がどのくらい嫌っていたのか、その辺の葛藤とかも興味深く読めるのではないでしょうか。

ところで、シービスケットの生涯成績って知ってました?
89戦33勝(2着15回3着13回)

昔の競馬は、調教代わりにレースを使う、ということもあったので、今の競走馬とは当然比較できないと思うんですが、劇中でも壮絶なマッチレースを演じた当時の名馬ウォーアドミラルが通算26戦(21勝)だったことを考えると、やはり普通じゃないと思います、この成績は。最近100連敗以上して話題になったハルウララは、勝てない(=レース後の負担も少ないはず)のにもかかわらず過酷なことさせられているなぁ、なんて思ってましたが、シービスケットの場合はそれどころじゃないわけですからね。あれだけ数々の名勝負を繰り広げ、過酷な輸送をしつつ、晩年まで走って、さらに故障を克服したうえで最後はアメリカの大レースを勝って引退する。そりゃぁ伝説に残りますって。

で、余韻に浸っているうちに、むしょうにもう一度映画のほうが観たくなってきたのでした。そして、実は先週末まで池袋の新文芸座で公開されていたのを知って、ちょっとしたショックを受けたのでした・・・。あぁ、はやくDVD
発売されないかなぁ。

投稿者 shaw : 23:46 | トラックバック

2004年05月15日

「竜馬がゆく」

ここ一ヶ月くらい、通勤時間に「竜馬がゆく」を読んでました。
これで5~6回目くらいになるんですけど、この小説は何度読んでも面白いです。傑作ぞろいの司馬文学の中でも最高傑作にあげられるんじゃないでしょうか。

最大の魅力は、坂本竜馬という明治維新の最大の立役者の一人の生き様をあまりにも爽快に、そして常人には計り知れないスケールの大きさを親近感をもって描いているところにあると思います。いまさら言うことでもないかな。ラスト直前、竜馬が薩摩の要人を前にして「世界の海援隊をやるきに」などというところでは何度目になっても鳥肌がやまないですねー。こんな生き方は自分には絶対に出来ない、ということがわかっているからこそ、こうも惹きつけられるんでしょうね。

これだけ繰り返し読むと、新しい発見というのがなくなってきましたが、一度読み始めたらやめられなくところを見ると、私の中で坂本竜馬とそれを描く司馬遼太郎氏への魅力は一切失われていないようです。次は何を読もうかな。。

2004年02月11日

パトリック&アンジー

と聞いてピンとくる人って、おそらくそんなに多くないですよね。
今朝まで、一ヶ月くらいかけて読んでいた私立探偵のシリーズ小説の主人公の名前なんですが、あまりの名コンビぶりにしびれながら、ついに刊行済みのシリーズを全て読みほしてしまいました。あまりハードボイルドな小説を読んだことないので、他のとの比較はできませんが、これは傑作だと思いますよ。本気でお勧めします。

私は何故か2作目の「闇よ、我が手を取りたまえ」から読み始めたのですが、あまりの面白さに残りの全巻を衝動買いしてしまいました。このシリーズとの出会いのきっかけは『ミスティック・リバー』ですが、いい拾い物でしたね。

参考サイト
デニス・レヘインの本の紹介
・「レへインはせつない」 (by Amazon)

投稿者 shaw : 15:59 | トラックバック

2004年01月15日

「闇よ、我が手を取りたまえ」

先日、新撰組本にはまりつつあるようなことを書いておきながら、気が付けば海外のミステリーに釘付けになってます。

「闇よ、我が手を取りたまえ」というタイトルの本なんですが、これが面白すぎる!ミスティック・リバーつながりでこの本にたどり着いたのですが、しばらくぶりに小説読みながら興奮してます。

どう面白いかをまとめる時間が惜しいので、少しでも興味を持った人はここでも見てください(手抜き)。さて、続きを読もうっと。

投稿者 shaw : 01:03 | トラックバック

2004年01月10日

新撰組血風録

最近、通勤時間に文庫本を読むようになりました。どうも活字を無性に読みたくなる時期と、そうでない時期の波があるようで、昨年末までは通勤時間はGBAを暇つぶしの友にしてましたが、このごろは本をずっと読んでます。

で、昨日までは「新選組血風録」を読んでました。
やっぱり面白いです。司馬遼太郎大先生の幕末ものは。
特に、司馬遼太郎氏が歴史小説を書き始めたばかりの活劇風の話は、親しみやすいし、読んでいてワクワクするので今でも愛読してます。
この「新撰組血風録」は、名の通った隊士のエピソードが短編形式で15個くらい納められているのですが、今までに聞いた(読んだ)ことのあるある話・ない話含めて、それぞれシンプルにまとめられていて、あっという間に読破してしまいました。虎徹や菊一文字といった刀にまつわるエピソードは、それぞれ近藤勇や沖田総司の人柄が出ていて面白かったです。

それにしても、新撰組って一言で言うなら日本史上でも屈指の殺人集団なわけで、それだけを考えたら日本の歴史上の汚点としてのみ記録に残ってもよさそうなものですが、それが後世になって勇士として描かれたり、やはり殺人者として扱われたりで、とても興味深い集団ですよね。今では、新撰組と聞いて心象悪く思う人ってあまりいないと思うのですが、これも子母澤寛氏の「新撰組始末記」や司馬遼太郎氏の「燃えよ剣」や同書の功績が多いんでしょうね。
そして、こうも新撰組というものに惹かれるのは、『ラスト サムライ』を観て感動するのとおそらく同じ理由なんだろうなぁ、などと考えたり。

久々に新撰組本を読んだので、この流れで次は「新選組始末記」か、長らく読んでいない「燃えよ剣」でも読むとしようかな。

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